歯科医師・歯科衛生士からひとこと
- 2023年10月掲載(歯みがきの準備は、歯が生える前から!?)
- 2023年8月掲載(アメリカ初代大統領をも苦しめた歯周病)
- 2023年6月掲載(元気なお口を保ちましょう)
- 2023年4月掲載(様々な唾液(だえき)の役割)
- 2023年2月掲載(あかちゃんの頃から食育を意識して取り入れて)
- 2022年12月掲載(食べるために大切な「歯」)
- 2022年10月掲載(乳幼児の窒息について)
- 2022年8月掲載(はじめての歯科医院はいつ行くの?)
- 2022年6月掲載(歯と口の健康週間)
- 2022年4月掲載(口臭について)
- 2022年2月掲載(歯みがきの大切さ)
- 2021年12月掲載(良い姿勢で整った歯並びを!)
- 2021年10月掲載(噛むこととスポーツって関係あるの?)
- 2021年8月掲載(一口、何回噛みますか?)
- 2021年6月掲載(歯ブラシの交換時期は?)
- 2021年4月掲載(口や歯に関する故事やことわざ)
2023年10月(歯科衛生士からひとこと)
歯みがきの準備は、歯が生える前から!?
お子さんと、楽しく歯みがきをできるようにするには…
歯が生えてくる前からの準備を始めることをおすすめします。
お口の中は、とても敏感です。そのため、段階を踏んで、歯ブラシに慣れていくことが大切です。
まず、第一ステップとして、歯が生える前から保護者の指や手で、お口の周りやお口の中をさわることから始めると良いでしょう。
お子さんが機嫌の良い時に、お互い楽しみながらスキンシップを始めてみましょう。
「お口の中の触り方」動画が“なごや動画館まるはっちゅ~ぶ”に掲載されています。よろしければ参考にご覧ください。
2023年8月(歯科衛生士からひとこと)
アメリカ初代大統領をも苦しめた歯周病
皆さんはジョージ・ワシントンをご存知でしょうか。
アメリカ初代大統領として肖像画が1ドル札の絵柄になっている人です。
彼は若い頃からむし歯や歯周病に悩まされ、大統領就任時には自分の歯は1本のみでした。総入れ歯を装着していましたが、当時は入れ歯を作製する技術が未熟で、気を抜くとバネの力で口から飛び出してしまうほどでした。
1ドル札の口を固く引き結んだワシントンの表情には、こうした秘密があったというわけです。
それでは、ジョージ・ワシントンをも苦しめた歯周病とは、どのような病気なのでしょうか。
歯と歯ぐき(歯肉)の間にプラークや歯石がたまり、歯周病菌によって歯肉が炎症を起こした状態(歯肉炎)、これに加えて歯を支える骨まで破壊され、歯がぐらつくようになった状態(歯周炎)をあわせて、歯周病といいます。歯周病が進行すると、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
厚生労働省の調査(歯科疾患実態調査)によると、歯周病の有病率は増加傾向にあり、成人の実に2人に1人の方が歯周病といわれています。お家でのお口のケアや禁煙を含めた規則正しい生活習慣、また歯科医院での定期的な歯科検診や歯のクリーニングが予防の鍵となってきます。
2023年6月(歯科衛生士からひとこと)
「元気なお口を保ちましょう」
歯やお口の機能を健康に保つことは、元気で自立した日常生活に役立ちます。
そのために次のことに気をつけましょう。
- 口の中を清潔に保つと、歯周病やむし歯または誤嚥性肺炎も予防できます。
- 歯の本数が多いほど、食べられる物が多く、噛むことで唾液も出やすくなります。
- 口の周りの筋肉をよく使うと、表情が豊かになり、はっきり発音することができます。また、会話をする、歌を歌うことも若々しさを保つことができます。
家でも簡単に☆
元気な歯やお口の機能を維持するために次の項目を始めてみましょう!
- 新聞や本を読むときは声を出して読みましょう。
- マスクをしていても、口角は上げて笑顔をキープしましょう。
- 話をするときはお口をしっかり動かして発音しましょう。
- お口の清掃をする前や清掃後に1分間ブクブクうがいをしましょう。
- 定期的に歯科医院で歯科検診を受けましょう。
早口言葉をやってみましょう
- ♪新春早々新人シャンソン歌手による新春シャンソンショー
- ♪ウリ売りがウリ売りにきて ウリ売り残しウリ売り帰る ウリ売りの声
2023年4月(歯科医師からひとこと)
様々な唾液(だえき)の役割
お口のなかには常に唾液が分泌され、食事や飲み込み、発声、味覚に重要な役割を果たしています。唾液は三大唾液腺(耳下(じか)腺(せん)、顎下(がっか)腺、舌下(ぜっか)腺)と、その他の小唾液腺から分泌されます。
その量は、健康な成人で1日約1.0から1.5Lが分泌されるといわれており、寝ている間は減少し、昼間、特に食事の際には増加します。だ液には全部で11の作用(潤滑・洗浄・再石灰化・抗菌・味覚・消化・会話等)があり、お口の機能の維持に役立っています。
病気などにより唾液分泌が低下すると、上記の作用が働きにくくなり、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。唾液の分泌量を増やすには、よく噛むことや、適切な水分補給が効果的です。
また、お口の体操として「唾液腺マッサージ」があります。ぜひ食前等でお時間があるときに取り組んで健康なお口を保ちましょう。
唾液腺マッサージ -お口が乾いていると感じたときに-(1日5から10セット目安)
- 耳下腺への刺激
- 耳たぶの前、上の奥歯のあたりを親指以外の4本の指で後ろから前に円を描くようにマッサージします。
- 顎下腺への刺激
- 親指をあごの骨の内側のやわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで5か所くらいを順番に押します。
- 舌下腺への刺激
- 両手の親指をそろえ、あごの下を軽くつきあげるように押します。
- 名古屋市ホームページより
- https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000137986.html(外部リンク)
2023年2月(歯科医師からひとこと)
あかちゃんの頃から食育を意識して取り入れて
食育の世界を、大きく二つの視点からとらえるとすると、「食べもの」と「食べ方」に分けることができます。このうち、歯科医師・歯科衛生士は「食べ方」に関する専門家です。
三つ子の魂百までということわざがあるように、幼いころに身につけた生活習慣や悪いクセ(専門用語で「悪習癖」(あくしゅうへき)といいます。)は、非常に治すことが難しい、あるいは時間がかかる場合が多くあります。
味覚についても、あかちゃんにとって、初めから完成されているわけではなく、心身の成長に伴って徐々に発達していきます。例えば離乳食は、塩などの調味料での味をつけない、もしくは食材によってごく薄味から始めることが基本です。市内各区の保健センターでは、「食べもの」の専門家である管理栄養士と歯科衛生士が協働して、離乳食教室を開催しています。
日頃から食育を意識していない方でも、少しでも「食べ方」について気になって、それが歯や、口の周りの動き方に原因がありそうだと思ったら、早めに歯科医師や歯科衛生士に相談しましょう。
歯やお口の健康も最終的には、食育に密接な関係があります。あかちゃんのこれからの長い人生、毎日の豊かな食生活のために、食育に関する軌道修正は、食べものについても、食べ方についても、「早期発見・早期治療が大切」と言えます。
2022年12月(歯科衛生士からひとこと)
食べるために大切な「歯」
離乳食、幼児食について、月齢や開始してからどれだけ経過したかを目安に、次のステップへすすめることも多いかと思います。
しかし、食事をする時に欠かせないのは「歯」です。歯があるかないかで、食べられる物は変わります。月齢だけではなく、お子さんの歯がどれくらい揃ってきたか、観察しながら離乳食や幼児食をすすめることが、上手な食べ方につながると言われています。
前歯が揃ってきたら是非やって欲しいことは、前歯を使って食べものをかじり取ることです。前歯でかじることにより、「噛む」という動きを引き出しやすくなります。また、一口サイズの物を口に入れる時より、唇や舌も使って食べることになるので、お口の力も育っていきます。
1歳6か月頃になると、奥歯が生えているお子さんが多くなります。
しかし、日本小児歯科学会によると、約30%のお子さんはまだ奥歯が生えていないことが報告されています。奥歯が生えてきているか、きちんと噛み合って機能してくれているかを見ることが大切です。
きちんと奥歯が噛み合っていれば、噛める食べ物の幅も広がります。
しかし、まだ奥歯が生えてきていない、噛み合うことができないお子さんの場合、繊維の強い野菜や肉等は食べづらい食材です。奥歯がないのにそのような食材をすすめてしまうと、丸呑みしたり、偏食につながったりしてしまいます。
お子さんの歯がどの程度揃ってきているのか、仕上げみがきの時などによく見てあげてください。自分の歯やお口で栄養を摂ることは、元気な身体を育むためにとても大切なことです。
2022年10月(歯科衛生士からひとこと)
乳幼児の窒息について
離乳食を与える際、ちょっと目を離した隙にお子様が食べ物をのどに詰まらせてしまい、ヒヤリとした経験はありませんか?0歳児の不慮の事故による死亡原因は窒息が多く、家庭内での事故防止はとても大切です。口は、空気と食品共通の通り道であり、「食べる」という口の中にものを入れる行為は、常に窒息の危険があります。
「窒息」とは、気道が完全に閉塞され、生きるために必要な呼吸ができなくなるため、生命に関わる重篤な危機を及ぼす状態です。
離乳食を始めたばかりの赤ちゃんはお口の機能(噛む力・飲み込む力)が未熟なので誤嚥しやすく、食べ物をのどに詰まらせてしまうことがあります。月齢や成長に合わせた固さや大きさの離乳食を与えることで、お口の機能を育てることができます。
そのため、いつまでも初期の頃のような形態(軟らかさ)を続けてしまうと、お口の機能が育たず、窒息を引き起こしやすい状態となる可能性があります。
お子様の様子をみながら、少しずつ固さや大きさを調整し、お口の機能を育てていくことが、悲しい窒息事故を防ぐことができる方法の一つです。
各区保健センターでは、お子さんの健やかなお口を育てるお手伝いをするために、各種教室を開催しています。
ご参加を心よりお待ちしております。
2022年8月(歯科衛生士からひとこと)
はじめての歯科医院はいつ行くの?
「むし歯菌の感染が心配」、「歯みがきを嫌がってちゃんとみがけない」、「歯の生え方が気になる」など、お子さんの歯が生え始めると様々な心配が出てきます。
では、いつから歯科受診をしたらいいのでしょうか。
-歯が生え始めたら受診しましょう-
歯が生え始める時期は個人差があり6から9カ月頃が目安です。その時期に歯科受診をすることで、歯の汚れ(みがき残し)の確認や仕上げみがきの方法など、お子さんのお口の状態にあわせた細かいアドバイスが受けられます。併せて定期的にフッ化物塗布をすることで歯を強くし、むし歯を予防します。
歯並びについても、歯の生え方の経過を見てもらうことで、歯並びの異常の早期発見にもつながります。
歯が生え始めた時期が早い、離乳食の進みが早い、甘いお菓子やジュースなどを摂っているお子さんは特に要注意です。早めに歯科受診をしてむし歯のチェックをしましょう。
はじめての歯科受診は、何が起こるのかわからない不安や怖さで泣いてしまうことも多いと思います。歯に問題が無い時期に受診をし、定期的に受診することで歯科医院に慣れ、痛みが出た時やケガなどの緊急時にも安心して受診できます。
お子さんの機嫌がよい時間帯を選び、保護者の方も一緒に定期検診を受けて、お口の健康に努めましょう。
2022年6月(歯科衛生士からひとこと)
「歯と口の健康週間」
6月4日から6月10日は「歯と口の健康週間」です。
「歯と口の健康週間」は歯科衛生の普及啓発運動として1928年6月4日に「むし歯予防デー」の名称で行われたのに始まり、以後、1949年から週間行事となりました。1952年には6月4日から10日までの1週間に定められ、1958年より「歯の衛生週間」として毎年実施、2013年より「歯と口の健康週間」と名称を変更して現在に至ります。
毎年コンクール(小・中学生対象)により標語が決まり、令和4年度は「いただきます 人生100年 歯と共に」となりました。この標語のように、生涯、自分の歯で美味しく食事ができるよう、毎日のお口のケアには気を配りたいものです。
また、この6月頃に学校、幼稚園、保育所等では歯科検診が実施されることが多いかと思います。名古屋市でも、6月頃に40歳・45歳・50歳・55歳・60歳・65歳・70歳・75歳・80歳(4月1日時点の年齢)の市民の方に歯周疾患検診無料クーポンの送付を予定しています。(10月1日より、4月1日時点で20歳・25歳・30歳・35歳の市民の方も対象となります。無料クーポンは9月頃に送付予定です。)
この機会に歯科検診を受診するなど、ご自身の歯と口の健康管理を見直してみてはいかがでしょうか。
2022年4月(歯科衛生士からひとこと)
「口臭について」
新しい年度が始まり、新入生や新社会人、「新」とつく方々は緊張の日々ではないでしょうか?
新○○とつかなくても、環境が変わった方、以前まではそれほど気にならなかった口臭が気になってきたという方はいらっしゃいませんか?
緊張やストレスにより、唾液が減ることで、お口の粘膜が乾燥するとより口臭は強くなります。
人と話すとき口臭が気になると思いますが、マスクをしていると、ついつい気が緩みがちになっていませんか?
日頃から口臭を少なくするためにお口のケアが重要です。
歯みがきを中心にデンタルフロスや歯間ブラシを使用しましょう!
歯と同様に舌のケアも大切です。舌の汚れを取るために舌ブラシを使用しましょう!
また、むし歯や歯周病は口臭の原因です。早めに治療することが必要です。
その後は、半年に1回は定期健診と合わせてお口のクリーニングもしましょう。
マスクをしなくてもいい生活になった時、口臭を気にせず話ができるように、日々気をつけていきましょう。
2022年2月(歯科衛生士からひとこと)
歯みがきの大切さ
みなさんは、どうして歯みがきをするのでしょう。「むし歯や歯周病を予防するため」、「なんとなく」、「毎日の習慣だから」、「歯をみがくとすっきりして気持ちがいいから」人によって、毎日の歯みがきの理由は様々かもしれません。
なんとなく毎日の習慣で続けているかもしれませんが、私たちの健康を維持するためにはとても大切な役割を果たしています。
私たちの口の中には約700種類の細菌がいますが、常に唾液が分泌されて、細菌が増えすぎないように洗い流す作用(自浄作用)が行われています。しかし、歯と歯の間や歯の溝、歯と歯肉の間などの口の中の狭い場所にたまった汚れ(細菌)は、唾液の流れが行き届きにくいため、歯みがきできれいにすることが大切になります。
歯ブラシだけでうまくみがけない場合には、歯間ブラシやデンタルフロスを使用するほか、フッ化物配合歯みがき剤を活用しむし歯を予防しましょう。
また、昼食後の歯みがきで口の中をさっぱりし気分を切り替えて午後の活動に入ることや、寝る前の歯みがきで一日のクールダウンをはかることなど、歯みがきは日常生活にメリハリをつける役割も果たしています。
近年、多様な味やみがき心地のする歯みがき剤なども市販されています。自分のお気に入りの歯みがき剤などを見つけて歯みがきを楽しんでみてはいかがでしょうか。
2021年12月(歯科衛生士からひとこと)
良い姿勢で整った歯並びを!
唇や頬が外側から押す力と舌が内側から押す力のつり合った所にU字型の歯並びができます。ですから、どちらかの力が強いと歯は弱い方へ傾いたり、移動して、整ったU字型にはなりません。
例えば、ずっと口を開いていると、唇より舌で押す力が強くなり、前歯が唇側に押されて出てしまいます。指しゃぶりや下唇を噛む癖なども押し合う力に差ができるため、注意が必要です。
人は寝たままでも飲んだり食べたりできますが、できるだけ起きて背筋をピンと伸ばして食べましょう。良い姿勢で食べると、唇、頬、歯、アゴ、ノドが十分に働き、お口の働きや身体が元気に育ちます。しかし、猫背で食べると下アゴが前にずれ、奥歯で噛みにくくなり、唇や頬、舌など筋力のバランスが崩れ、歯並びに影響します。
また、口呼吸は、舌が本来の位置より低くなり、上アゴが狭くなります。口を開いてクチャクチャ音がする食べ方も唇より頬が横から歯を押す力が強いため、歯列が狭い状態になり、奥歯で十分に噛めなくなります。奥歯の噛み合わせが不安定になると姿勢も悪くなることがあります。
良い姿勢で食べることは、整った歯並びを作ります。お口の働きを育てる食べ方は、唇を閉じて奥歯でよく噛み、下アゴを少し引いて唇を閉じ、舌全体を上アゴに密着させて『ゴックン』と飲み込みます。おとなの歯が生え始める就学前までに、良い姿勢でお口を育てる食べ方を身につけたいものです。
2021年10月(歯科衛生士からひとこと)
「噛むこととスポーツって関係あるの?」
新型コロナウイルス感染症が蔓延するなか「東京オリンピック・パラリンピック」が大きなトラブルもなく閉会しました。努力の結晶であるアスリートのパフォーマンスに感動し、喜びや悔しさの涙に心を動かされた方も多かったことでしょう。
アスリートのパフォーマンスの向上には主に3つの観点から「噛むこと」が大きく関係しているといわれています。
- 1.筋力アップ
- 重いものを持ち上げる時など、グッと力を入れようとすると自然に口の周りにも力が入っていませんか?歯を噛みしめることで筋力が4から6%程度アップすることもあるといわれています。わずかな違いですが、アスリートにとっては勝つか負けるかの大きな差になります。
- 2.重心、姿勢の安定効果
- 上下の歯でしっかり噛めている場合と、かみ合わせが悪い場合とでは重心動揺(直立した場合のふらつきなど)に違いがあり、かみ合わせが悪いと重心がブレやすいことがわかっています。特に奥歯でしっかり噛むことで首にある筋肉(胸鎖乳突筋)に力が入り、首が安定することで体が動かしやすくなるといわれています。
- 3.集中力と判断力の向上
- しっかり噛むことで認知機能をつかさどる前頭前野の血流がよくなり、集中力と判断力が高められます。
オリンピックの影響を受けてスポーツを始められた皆さん、歯や歯ぐきを健康に保ち、日頃からしっかりかんで食べ、咀嚼筋を鍛えて運動パフォーマンスを向上させましょう。
(参考:噛むこと研究室より)
2021年8月(歯科衛生士からひとこと)
一口、何回噛みますか?
このように聞かれて、すぐに「〇回!」と答えられる方はいますか?おそらく、ほとんどの方が答えることはできないでしょう。それほど、食事において「噛む」という行為は自然なことであり、あまり意識をせず行っています。しかし、この「噛む」という行為、実はとても大切な作業なのです。
「噛む」作業、いわゆる咀しゃくは、お口の中に取り込んだ食べ物を細かく砕き、唾液と混ぜ合わせることで次の段階の「飲み込み(嚥下)」をしやすくします。また、よく噛むことは脳への刺激にもつながり認知症予防や肥満防止にもなるといわれています。厚生労働省では、一口に30回以上噛むことを目標とした「噛ミング30(カミングサンマル)」という運動を提唱しています。
また、意識してしっかりと噛むだけでなく、乳幼児期からお口の機能を育むことが重要になってきます。食べやすいようにと食材を細かくしたり軟らかくしたりした食事を中心にすると、十分な咀しゃくを得られません。乳幼児期の食事は、調理方法を工夫して手づかみ食べやかじり取りといった作業を取り入れて噛む習慣を身につけていきましょう。
このコロナ禍において食事の場面では黙食が推奨されていますが、この機会によく噛んで食べることを意識し、食事をしてみてはいかがでしょうか。
2021年6月(歯科衛生士からひとこと)
歯ブラシの交換時期は?
今お使いの歯ブラシはどのくらいの期間使用していますか?歯ブラシの交換時期の目安は約1カ月と言われています。歯ブラシは毛の弾力を使って、歯にこびりついた汚れやプラークを落とすため、毛が広がってきたりコシがなくなってくると汚れを落とす能力が下がってしまいます。また、歯肉を傷つけてしまう可能性もあります。定期的に歯ブラシを交換することをおすすめします!
また、歯ブラシ使用後は
1.しっかり水洗いし、歯ブラシの根元に歯みがき粉や食べかすが残っていないか確認しましょう
2.しっかり乾燥させてください。
小さなお子さんの場合は、歯ブラシを噛んでしまいすぐに毛先が開いてしまうと思います。その度に変えていくのは大変なので、自分みがき用とは別に保護者の方が使う仕上げみがき用も準備して、仕上げみがき用はいつも毛の整ったものを使って汚れを落としてあげましょう。
毎日お口の中に入れるものなので、常に清潔な歯ブラシを使ってお口の健康を保ちましょう!
2021年4月(歯科医師からひとこと)
口や歯に関する故事やことわざ
失言や不適切な行動を戒めたり、人の仕草や感情を表現する「ことば」があります。
このなかで、口や歯に関するものをあげてみました。シッカリ噛むことや健康な口や歯で活き活きとした毎日を過ごすことの大切さがみえてくるのもあります。
- 1.あいた口へ牡丹餅・あいた口へ餅
- (思いがけぬ幸運のめぐりくることのたとえ)
- 2.あいた口が塞がらぬ
- (あきれかえるさま)
- 3.奥歯に衣着せる
- (事実をありのままに言わずに、どこか思わせぶりに言う)
- 4.奥歯に剣
- (敵意を隠して表面に表さぬこと)
- 5.奥歯に物が挟まる
- (十分に心が打ち解けないで、思うことを素直に言い切らぬ感じを表す語)
- 6.親の奥歯で噛む子は他人が前歯で噛む
- (親が子をかわいがりすぎて必要な時に叱らぬと、その反面に他人からひどく叱られること)
- 7.親の脛齧る息子の歯の白さ
- (独立することができず親のおかげで生活する人が、かえって身なりを小奇麗に飾って遊び暮らす例が多いこと)
- 8.噛ませて呑む
- (人にかみくだかせた物を呑むことから、骨折らずに功をなすことのたとえ)
- 9.噛んで吐き出したよう
- (そっけなく言うさま)
- 10.噛んで含める
- (十分に理解するように言い聞かす)
- 11.食うか食われるか
- (相手を倒すか相手に倒されるか、命がけの争いにいう)
- 12.食うや食わず
- (甚だしく貧乏して生計の苦しいさま)
- 13.食ってかかる
- (激しい口調で反抗する)
- 14.口が掛かる
- (芸人などが客から招かれる)
- 15.口が過ぎる
- (失礼なことを言う、言葉がすぎる)
- 16.口が塞がらぬ
- (あきれてものが言えないさまにいう)
- 17.口が減らない
- (口が達者である、へらず口をきく)
- 18.口から先に生まれる
- (口の達者な者や、お喋りの者)
- 19.口に合う
- (飲食の好みに合う)
- 20.口は禍のもと
- (うっかり吐いた言葉から禍を招くことがあるから、言葉を慎むべきである)
- 21.口も八丁 手も八丁
- (喋ることもすることも達者なことをいう)
- 22.口を利く
- (ものを言う、とりなす、紹介する)
- 23.口を切る
- (最初に発言する)
- 24.口を拭う
- (知っているのに知らぬふりをする)
- 25.口を割る
- (包み隠していたことを白状する)
- 26.尚歯【しょうし】
- (高齢者を尊ぶこと)
- 27.歯が浮く
- (歯の根がゆるむ、軽薄・気障な言行を見聞きして不快になる)
- 28.歯がたたぬ
- (硬くて噛むことができない、相手が強くて対抗できない)
- 29.歯に衣着せぬ
- (包み隠さずに言う、へつらわずに言う)
- 30.歯の抜けたよう
- (まばらで不揃いなさま、うつろなさまの形容)
- 31.歯の根が合わぬ
- (寒さや恐れのために、ふるえおののくさまにいう)
- 32.歯の根も食い合う
- (非常に親しい間柄である)
- 33.歯の根を鳴らす
- (歯を食いしばって怒る)
- 34.歯を噛む
- (歯を噛みしめて残念がる)
- 35.歯を食いしばる
- (無念・憤怒・苦痛などをこらえるさまにいう)
- 36.歯魔羅目【はーまらめ】
- (年をとるとこの三つが順に衰えることをいう)
- 37.明眸晧歯【めいぼうこうし】
- (澄んだひとみと白い歯と、美人の形容にいう)
- 38.病は口より入り禍は口より出ず
- (病気は飲食物からおこり、禍は言葉を慎まぬことから起こる)